個人情報保護法の改正、病歴の同意なし提供は統計の作成に限る
個人情報保護法の改正法が2026年7月17日に公布されました。柱は統計の作成やAI開発に本人の同意を不要とする「統計作成等の特例」です。「公開されているものに限る」のは取得だけで、第三者への提供は公開されていない病歴なども対象に含まれます。施行日はまだ決まっていません。
個人情報保護法の改正法が2026年7月17日に公布され、個人情報保護委員会が同日、改正の内容を公表しました。柱の一つが、統計の作成やAI開発に使う場合に本人の同意を不要とする「統計作成等の特例」です。同意が要らなくなるのは統計情報等の作成にだけ使う場合ですが、第三者への提供は、公開されていない病歴なども対象に含まれます。施行日はまだ決まっておらず、いま院内で変えることはありません。
診療所に関係するのは、この特例の条件と、もう一つの改正項目である研究目的の例外です。
「公開されているものに限る」のは取得だけで、提供は別
個人情報保護委員会の資料は、特例の対象を「個人データ等の第三者提供及び公開されている要配慮個人情報の取得について、統計情報等の作成にのみ利用される場合は本人同意を不要とする」と説明しています。「公開されている」が掛かるのは取得のほうだけです。
| 行為 | 対象 | 公開されているものに限るか |
|---|---|---|
| 第三者へ提供する | 個人データ等(病歴などの要配慮個人情報を含む) | 限らない |
| 取得する | 要配慮個人情報 | 公開されているものに限る |
要配慮個人情報について、同資料は「信仰・病歴・犯罪歴などの差別につながり得る情報」と説明しています。医院が持っている患者さんの病歴は公開されていませんが、提供する側に回る場合は、公開されていなくても特例の対象になります。
もっとも、無条件ではありません。提供する側と受け取る側は、それぞれの名前と何を作るのかを公表し、統計の作成だけに使うことを書面で合意する必要があります。受け取る側には、目的外の利用と第三者への提供が禁止されます。
診療所も「学術研究機関等」に入る見込みです
対象になるのは、学会発表や症例報告で患者さんのデータを研究のために使う場面です。本人の同意を必要としない例外規定があり、現行法ではその対象が大学など「学術研究機関等」に限られ、病院や診療所は含まれていません。
改正法は、この「学術研究機関等」に「医療の提供を目的とする機関又は団体」を加える内容です。個人情報保護委員会は資料で、診療所等も含まれることを想定していると説明しています。
具体的な対象範囲は、今後の規則やガイドラインで決まります。
ここから先は編集部の見立てです。影響が出るとすれば、学会発表や症例報告で患者さんのデータを使うときの同意の取り方でしょう。初診時や入院時にまとめて同意を得ている医院では、その様式を見直す場面が出るかもしれません。電子同意書システムで同意を取っている場合も、見直す対象は同じ様式です。一方、職員の人事や健康診断のデータは研究に使う場面が限られるため、影響は小さいとみています。
院内規程や同意書の見直しは、施行日とガイドラインの公表後
今回の改正に合わせて、現時点で院内規程や同意書を変更する必要はありません。施行日と対象範囲を示すガイドラインが公表された段階で、自院が対象になるかを確認します。
国会では、この一点をめぐって修正案が出た
審議で繰り返し取り上げられたのも、ここでした。2026年5月26日の衆議院本会議で犬飼明佳議員(中道改革連合・無所属)は、要配慮個人情報を「人種、信条、病歴、障害、犯罪歴など、差別や不利益に直結しかねない、最も慎重に保護されるべき機微な情報」としたうえで、統計作成等という名目で同意なく取得や提供ができるようになると述べています。6月12日の参議院本会議では郡山りょう議員(立憲民主・無所属)が「個人の病歴、信仰、犯罪歴などが外に漏れれば、その人の尊厳が、人生そのものが、取り返しの付かない形で傷ついてしまいかねません」と述べました。
参議院では立憲民主・無所属、公明、沖縄の風が修正案を提出しています。公明党の司隆史議員は6月12日の参議院本会議で、「提供可能な個人情報から要配慮個人情報を除外する法案修正が必要ではないでしょうか」と述べ、7月8日のデジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会では原案に反対・修正案に賛成の討論を行いました。同じ日、伊波洋一議員(沖縄の風)は、EUのGDPRのような匿名化等の措置を求めず「氏名、住所と結び付いた生の個人データのまま」同意なしに取得と第三者提供ができる点を挙げて反対しています。
修正案は通らず、公布された法律では要配慮個人情報が第三者提供の対象に残りました。報道でも、東京新聞が5月29日に「病歴や犯罪歴 本人の同意なく提供可能に AI開発後押し」の見出しで、読売新聞が5月10日に開発優先の方針への懸念を、それぞれ取り上げています(いずれも国会で議員が引用したもの)。
もう一つの改正項目として、課徴金の制度も新しく入ります。対象は4つの要件をすべて満たす場合に限られます。本人の数1,000人を基準とした大規模な事案であることは、その要件の1つです。
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の公布について」(令和8年7月17日)
- 個人情報保護委員会事務局「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」(令和8年7月)
※学術研究機関等への追加は第16条第9項ほか。「例えば、病院や、その他の医療の提供を目的とする機関等(診療所等)が含まれることを想定」と注記されています
※課徴金は、①対象行為(4類型)②対象行為を防止するための相当の注意を怠っていない場合は除く ③個人の権利利益が侵害され、または侵害される具体的なおそれが生じた場合 ④本人の数について1,000人を基準とする大規模事案、の4つで限定されています - 国会会議録(国立国会図書館 国会会議録検索システム)。犬飼明佳議員の発言は2026年5月26日 衆議院本会議、郡山りょう議員および司隆史議員の発言は2026年6月12日 参議院本会議、司議員・伊波洋一議員の討論は2026年7月8日 参議院デジタル社会の形成及び人工知能の活用等に関する特別委員会
※東京新聞(2026年5月29日)と読売新聞(2026年5月10日)の見出し・内容は、2026年5月29日 衆議院厚生労働委員会および5月21日 衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会で早稲田ゆき議員が引用したものによります(紙面そのものは確認していません) - 個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」
本記事は編集プロセスの一部で生成AIの技術を活用し、その上で医療DXガイド編集スタッフが確認・加筆・修正したうえで掲載しています。